中国人社長との最終面接2

 

社長は中国人だった。

前半は中国語、後半は日本語だった。
 

社長のほかに前回のおばさん専務も一緒だった。


社長からは、私の中国の関する経歴を散々聞かれた。

曰く、

「君は、シルクロードとかチベット雲南、広西など風光明媚な 綺麗な中国しか見てない!」




「四川の成都には5回行きました。」

といえば…


成都は、何が有名か知ってますか? そう、君の言う通り茶房ですね。茶房。
お茶ひとつオーダーすれば何時間でも居座れ単なる暇つぶしの場所。
お喋りでもマージャンでも何でも出来る喫茶店あれは成都でしか通用しませんよっ!


あそこは人口が多いですが、日本で言えば長崎みたいな単なる地方都市です。
私は上海人で成都には行ったことはありません。
しかし、上海ではあのような成都に山ほどある茶房は流行りませんし通用しません!
生き馬の目を抜くのが本当の中国であり、上海なのです。」


(故に、お前は"本当の"中国を見ていない!)


次から次へと質問が飛んでくる。


君は、中国を、中国人をどう思っているのか?


のらりくらりと、時には詰っかえ、たどたどしい中国語で話すうちに社長が言う。


「君はね、綺麗な中国しか見てないけど 中国のバックグラウンド分かってるね。
うちの社員は、中国の工場に行っても中国人に精通した人がいないんだ。
だから、社長の私が現地に飛ぶしかないんですよ。」



「写真が出来るのなら、画像処理は出来るのか?」
「今までなんでぷらぷらしてたのか?」
「今だけモーチベーションが高くても困るんだ。」
「アパレルとか言うけど、実際はすごい泥臭い仕事なんだ。」

二人からの質問(尋問、詰問に近い)が二時間ばかり続く。


最後に、おばさん専務が言う。



「うちの会社にいらしたらどうですか。
私は、あなたの母親になったつもりで世話します」


「明日までに返事をします」


即答は避け丁重に挨拶し社屋を辞した。


面接が終わって、


中国人経営者の職場にいたことのある友人に電話。
就職活動仲間にも聞いてもらう。


散々相談する。
それでも埒が明かず、高円寺の韓国料理店で酒を煽る



朝まで考えた末、内定を辞退した。


労働条件、自分の興味範疇、 今までの労働体験を考えての結論だった。

 
俺は決断力がない。

優柔不断。
なにか決断を迫られると右往左往する。


「君は、なんでもかんでも人の意見を訊き過ぎる。」

友人に言われた言葉を思い出した。



しかしながら、今回の三回の面接(合計3時間)は いい勉強になった。


例えば、自分が中小企業の経営者(または人事担当)だったとして
30過ぎの男を雇うとしたら...

経歴書、履歴書を見れば自由極まりない人生。
そこからプラスな要素をいくらすくい取ったとしても


「せっかく教育(投資)しても また何処かに行ってしまうのではないのか?」


この問いは、(経営という)営利活動をする側から言えば、 至極当然だと思う。


”リスキーである"私に対する危惧、懸念を払拭するに足る 誠意と説得性。


それに尽きるんだなと実感した。


ピアノや書道のようなお稽古ごと、一種の教養と割り切っていた中国経験が、ひょっとしたら仕事に繋がるかもしれない。


そんな予感に触れられただけでも貴重な体験だった。


もう一息頑張ってみます。