ホスト体験記1

 

新宿アルタ交差点前。

 

お兄さん、ホストやってみない?


「俺、もうXX歳ですから。」


この一言が全ての始まりだった。


「何言うてるんですか。XX歳で入って活躍してる元大工もいるから」
(関西人のキャッチ)の第一声。

数分間やり取りした後、興味本位も手伝って「お店を見学する」ことになった。新宿駅から徒歩7分くらいの歌舞伎町のホストクラブ。若しもの為に、入念に現在地を把握し安全を確認した。

とある雑居ビルの三階。古いエレベータが開けば、白亜の内装。店の正面には、売れ筋ホストの背景黒の、この業界独特のスタジオ写真が貼ってある。

「ヤバイ」ところに連れて来られたわけではないと、少しだけ安堵した。

入るとまだ開店前で面接場所になっていた。初めて入るホストクラブ。150平米くらいの大きさでフローリング、段差が1箇所あり、白いソファーがL字型、U字型にゆったりと置いてあった。

隣では、目がクリっとしたおかっぱ風の控えめな髪型。長身でスーツ姿の、20代中半くらいの人男性が面接を受けていた。「本職はサラリーマンです」と言うのが聞こえた。

ウーロン茶と用紙を差し出される。「住所は区まででいいです。」と言われ、名前、生年月日、電話番号、職業の欄。五段階で酒がどれくらい飲めるかという項目が。「普通」にしておいた。

面接したロン毛のホストは、今回の募集の趣旨(新規オープンで人員を増員していく)、当店では他店に比べ上下関係がそれほどシビアでない、新規出店なので自分の客を持ちやすい、暴力沙汰になればクビになるから苛めはない等、一通り「安心情報」を述べた。 


「冷めないうちに一週間以内に体験入店(「タイニュー」と言う)してみませんか?もし出来れば今晩なんてどうでしょう?始発まで。」



「ええーーーーーっ、今日っすか?!」



「ホストという世界がどういうものなのか、一度見るだけでも損はしないと思います。実際見て自分で合うか合わないか判断してもらいたいんです。

こちらの方としても、いやいや入られても新規オープンの士気に関わるので、無理強いは絶対しませんから。ウチのものが接客してる席に座ってもらって、ただ飲んで様子を見てるだけで良いんです。一人だけには絶対させませんので大丈夫です。」 


「宜しくお願いします。」  



即決だった。



---つづく-----